現地採用リポート2005
1.調査概要
1.1. 本調査の目的
昨今、アジア各国において現地採用待遇で働く日本人が増加している。タイにおいても、日系企業を中心として、現地採用日本人を即戦力として 積極的な採用をする動きが活発である。しかし、現地採用という働き方は最近の働き方であり、その実態はまだまだ明らかにはなっていない。今回の調査は、こうした現地採用日本人の労働条件や就業意識などの現状を明らかにするために行った。
1.2. 調査時期
2004年10月~12月
1.3. 有効回答者数
74名へアンケート用紙を送付もしくは手渡しした。40名から返答があった(現地採用日本人のみ)。回収率は54%だった。
1.4. 調査方法
仕事の決まった方や登録者の方を中心に、アンケート用紙を送付もしくは手渡ししてもらった。
1.5. 備考
主に20歳代から30歳代を中心にした日本人への配布を依頼した。よって、若い世代からの返答に偏った可能性はある。また、回答者は基本的 に就職前のスクリーニングを受けおり、かつ労働許可証の発行を前提としている企業へ就職した人がほとんどである。よって、今回の調査結果は、このようなス クリーニングを経た正規労働者で、かつ比較的労働に前向きな人からの回答に偏った面はあると考えられる。タイで働く日本人はまだまだ多様で、いくつかのカ テゴリーを形成している可能性がある
2.調査結果(1)回答者の属性・現職の概要
2.1. 属性
年齢・性別
回答者は、20歳代後半から30歳代前半が最も多かった。特に、30歳代前半の層の日本人が多かった。男女比が約7対3(男性27名、女性13名)であった。


出身地域
回答者の出身地は東京都が最も多かった。また東京都をはじめとする首都圏出身者が20名で、全体の約半数を占めた。

婚姻状況および子供の有無
40名中28名が未婚者で12名が既婚者であった。20歳代は全員が未婚者だった。30歳代は13名が未婚者で、10名が既婚者だった。また、子供の有無に関しては、40名中34名に子供がいなかった。子供がいたのは30歳代の年齢層で23名のうち6名に子供がいるに過ぎなかった。


学歴
現地採用日本人の学歴の特徴は、高学歴なことである。現地採用日本人に学歴を、「中卒」「高卒」「専門学校卒」「短大卒」「大学卒」「大学院卒」の6項目から選択式で回答してもらった。「大卒」と「大学院卒」をあわせると28名、すなわち7割が大卒以上の学歴であった。

2.2. 現職の概要
業種
19項目「金融」「貿易」「流通」「旅行」「ホテル」「サービス」「通信・IT」「運輸」「電子・機械」「一般機械」「自動車・輸送機」「化学・材料」「鉄・非鉄金属」「繊維・アパレル」「紙・パルプ」「食品」「不動産」「建設・土木」「その他」の中から回答(複数回答可)してもらった。回答は分散したが、多かった回答は、「サービス」(9名)「通信・IT」(6名)だった。(内訳については、以下の「職種」の欄の一覧表に掲載)
職種
17項目から選択方式とした。項目は「財務・経理」「法務」「人事」「貿易」「総務・庶務」「営業」「マーケティング」「生産」「品質管理」「研究開発」「製造技術」「IT技術」「物流関連」「金融関連」「秘書」「通訳」「その他」で複数回答可とした。40名から84件の回答があった。一人あたり平均2.1職種に携わっている計算になる。最も多かった回答は、「営業」の23名で半数以上の人が携わっていた。2番目に多かった回答は、「人事」の10名で、第3位が、「マーケティング」の8名だった。

ポジション
ポジションは7項目の選択肢を用意した。「社長・副社長」「役員クラス」「部長クラス」「課長クラス」「係長クラス」「一般従業員クラス」「アドバイザー・顧問」である。


この中で、最も多かった回答は、「一般従業員クラス」で約4割強(16名)を占めた。その次が「部長クラス」「課長クラス」で共に7名であった。男性の方が相対的に高いポジションを占める傾向があった。「社長・副社長クラス」の4名に関しては、そのうちの2名がオーナー社長であった。
企業の主な出資元(国別)
現職の企業の出資元(国別)について「日系企業」「地場系企業」「非日系企業」の3項目から選択してもらった。40名中30名が日系企業に勤務しており7割半を占めた。地場系企業は9名、非日系企業は1名であった。

勤務地
圧倒的にバンコク勤務者が多かった。回答のあった32名中8割(26名)を越す人がバンコクで勤務していた。

給与<月給・手当て・ボーナス>
<月給>
4万バーツ~5万バーツ未満の月給を得ている者が一番多く8名にのぼった。次に多かった金額帯が3万バーツ~4万バーツ未満と6万バーツ~7万バーツ未満で、共に5名であった。とはいうものの、10万バーツ以上の高給を得る者も5名おり、給与額はかなり分散したといえる。中央値は5万3000バーツであった。
年齢が上がるにつれて、月給が高くなる傾向が見られた。また、女性よりも男性の月給の方が高額になる傾向が見られた。女性では、7万バーツ~8万バーツ未満の月給を得る者が1名いたが、それ以上の月給を得る者はいなかった。10万バーツ以上の月給を得ている5名はすべて男性であった。そのうちの2名は20万バーツ以上の月給を得ていた。男女の月給の中央値はそれぞれ6万バーツと4万2500バーツでその差は、1万7500バーツもあった。


<手当て>
駐在員の多くには支給される手当てであるが、現地採用日本人には一般的でなかった。27名中の7名に支給されているにとどまった。

<ボーナス>
ボーナスに関しては、33名中の4割近く(13名)が無支給だった。一方で20万バーツ以上のボーナスを得ている者もいた。金額は分散した。

各種の医療保険の加入状況
各現地採用日本人の医療保険の加入状況を質問した。選択項目には、「日本の国民健康保険に加入(本人負担)」「海外旅行傷害保険に加入(本人負担)海外旅行傷害保険」「海外旅行傷害保険に加入(会社負担)」「タイの保険会社の医療保険に加入(本人負担)」「タイの保険会社の医療保険に加入(会社負担)」、「日本企業の健康保険組合などに加入」「家族(両親など)の扶養」「その他」の8つの選択肢を用意した。実際には、これらの選択肢以外に、タイの社会保障制度でカバーされる医療保険(被用者社会保障制度)もあるのだが、医療内容は日本人にとって現実的な選択肢ではない。本調査では、日本人にとって、現実的だと考えられる医療サービスのみを選択肢として採用した。なお、複数回答可とした。
なお、選択肢の中の「日本企業の健康保険組合などに加入(日本の会社負担)」は、現地採用日本人からは本来回答のあり得ない質問である。(表では省略)
結果は、「タイの保険会社の医療保険に加入(会社負担)」と回答した者が10名と一番多かった。また、「海外旅行傷害保険に加入(会社負担)」と回答した者も6名を占めた。この両方の保険に重複して会社負担で加入しているケースはなかった。よって16名すなわち4割の日本人には、医療保険に関して勤務先の補助を受けている結果になった。一方で、「海外旅行傷害保険に加入(本人負担)」と回答した者が7名、「タイの保険会社の医療保険に加入(本人負担)」と回答した者が8名で、計15名すなわち4割弱が自己負担で医療費をまかなっていた。

3.調査結果(2)回答者の就業意識
3.1. 長期的な見通し
「今後何年タイで働きたいですか」という質問に対して、「約1~2年」「約3年~4年」「5年以上」「一生」「未定」から選択してもらった。40名中6割の23名が、今後の就労予定年数を未定としていた。一方で、「5年以上」や「一生」タイで就労する予定であると回答した者も3割(12名)に上った。


3.2. 職歴
回答者の中で、日本で勤務経験のある31名について、日本での勤務社数の平均は1.97社であった。タイでの勤務経験社数の平均は1.98社だった(現職を含む)。日本とタイをあわせた平均勤務経験社数は、3.53社であった。(日本での職務経験のない回答者がいるため、上記の数字の和{1.97社+1.98社=3.95社}が日タイでの勤務経験社数とはならない。)
ここでは、就労前および就労中のタイ語学習の有無とその期間を質問した。「あなたは、タイで初めて仕事を始める前に、家庭教師についたり学校に通ったりしてタイ語を学習する機会がありましたか?」との質問に対して、約半数近くが「学習したことがある」と回答した。学習したことのある者の学習期間は比較的長く、4ヶ月以上勉強したことのある者がほとんどで14名を占めた。一年以上勉強したことのある者も4名いた。

また、「あなたはタイで仕事をしながら家庭教師についたり学校に通ったりしてタイ語を学習する機会がありましたか(ありますか)?」と質問した。「ある」と回答のあった者は10名で約4分の一であった。
3.4. 国民年金の加入状況
回答のあった38名中の25名すなわち、6割半ほどが未納者であった。支払っている者は13名だった。次に、支払っている者の支払い原資を質問したところ、現在の収入から支払っている者は1名に過ぎなかった。その他12名は、両親など親からの援助もしくは貯蓄で支払っていた。
なお、未納者に対しては、未納理由を次の5つの選択肢から複数回答可で選択してもらった。「国民年金を信用していない」「老後は国民年金には頼らない」「金銭的に余裕がない」「必要性を感じない」「その他」である。その結果、「金銭的に余裕がない」ために支払っていない者が27名中8名を占めた。支払っていても現在の給与では賄えていない者(12名)と、支払いたくても余裕のない者(8名)をあわせると全体の半数(20名)を占めた。すなわち、国民年金に負担を感じている者が半数いることが判った。また、別の未納理由では、「老後は国民年金には頼らない」「必要性を感じない」と回答した者もそれぞれ9名、10名おり、積極的に国民年金を支持しないことで支払っていない者も相当数に上ることが判った。
なお、国民年金は「日本在住の日本人に支払い義務」ではあるが、海外在住日本人には支払い義務はない。したがって、必要な手続きを経て支払っていない者もいると思われる。しかし選択肢の中には含めなかったので、今回の調査ではどれぐらいの日本人が、この理由で未納なのか明確には判別できなかった。

参考までに、日本国内の現状を述べると、「支払いを免除されていないのに2003年度までの2年間の保険料を、一ヶ月分以上納めないままになっている者が、加入者全体の45%にのぼる」(『読売新聞』2004年10月12日)とのことだ。



