2023.07.21タイの文化

タイの季節の行事:ローイクラトン

ローイクラトン(灯籠流し)は、ソンクラーン(タイ正月)と並ぶタイを代表する行事の一つです。毎年、タイ陰暦12月の満月の夜に行われます。現在の太陽暦では、だいたい11月にあたりますが、ちょうど雨季が明け、比較的涼しく過ごしやすい季節となります。月影の下、無数のろうそくの火が流れていく光景は、この上なく幻想的で感動的なもの。この時期になると『ローイクラトンの歌』があちこちで聞かれますが、思わず踊りたくなるようなお祭らしいメロディになっています。

そう、灯籠流しと言っても、日本の行事とは意味合いが全く異なります。日本では長崎の精霊流しが有名ですが、亡くなった方の魂を弔うお盆の行事ですね。灯籠流しは中国やインドなどにもありますが、タイのローイクラトンがいつ、どこから伝わったのか、残念ながらはっきりとはわかりません。説として、仏陀に祈りを捧げる行事、バラモンの儀式に由来するともいわれています。古くは、農民が水の精霊に感謝を込めて灯籠を流していたようです。

現在では、恋人たちが末永く一緒にいられることを願って灯籠を流すことも多くなっています。ですから、彼氏や彼女がいない人は、この日はちょっとさみしい。日本のクリスマス・イヴみたいなものでしょうか。ちなみに、タイの恋人たちにとっては、クリスマスはそんなに重要ではありません。家族がいる人は、子供たちも皆連れてローイクラトンに出かけます。

「ローイ」とは「浮かべる」の意味。「クラトン」はここでは「灯籠」のことですが、バナナなどの葉を折って作った容れ物全般を指す言葉です。ローイクラトンの灯籠はバナナの葉の他、真ん中の台としてバナナの茎も使います。その上に蘭などの花を乗せ、ろうそくと線香を挿します。タイの人たちは、学校行事などで一度はクラトン作り体験をしていますよ。一般的な蓮の花をかたどったクラトンは、スコータイ王朝時代(13世紀〜1438)に王の寵愛を受けた女性詩人・ノッパマート妃が発明したと言い伝えられています。そのため、ローイクラトンのイベントでは、この女性の名にちなんだ「ノッパマート美人コンテスト」も開かれます。

 

ローイクラトンの夜は、タイ全国各地でイベントが開催されます。バンコクでは、まずチャオプラヤー川に行ってみましょう。タークシン橋の舟着場から特別ボートも運行しており、ワット・アルン(暁の寺)のライトアップを眺めながらロマンティックな夜を過ごすこともできます。また、チュラーロンコーン大学やルムピニー公園、ベンチャシリ公園の池にも多く人が集まります。夜店も出て、夏祭みたいな雰囲気。プールサイドでイベントをするコンドミニアムもありますね。

チェンマイの「イーペン」という行事も有名です。地方の言葉で「イー」は「2」、「ペン」は「満月」の意味。ラーンナー王朝の陰暦2月の満月の日のことで、もともとお寺詣りをする行事だったそうですが、タイ陰暦の12月の満月と同じ日にあたるので、ローイクラトンと融合して現在の祭になりました。この祭では、「コームローイ」という天灯を夜空いっぱいに揚げます。英語ではスカイランタンなどと呼ばれていますね。パレードも美しく、国内外からの観光客で混み合うため、1年前から予約する人もいるほど。

古代遺跡のあるアユタヤーやスコータイなどでも盛大なイベントが開かれます。イベントに参加する人たちの伝統的なタイ衣装も華やかで美しく、目を奪われます。

 

楽しいローイクラトンですが、ひと夜にどっとクラトンを流すので、環境問題になってしまうこともあります。手軽で安価な発泡スチロールを台にしたクラトンが売られていることもあるのですが、人工物なので環境にはよくないですね。そこで、食べ物のパンを台にしたクラトンも作られるようになりました。これなら溶けて魚の餌になるというアイディアでしたが、多過ぎるとやはり水が濁るので、よい解決策とはいえません。結局、川下で回収するのがベストのようです。

もう一つ、水の事故の問題もあります。というのは、祈りを捧げるとき、クラトンに硬貨を入れて流すこともあるため、スラムの子供たちなどが夜の川に入り、クラトンを壊してお金を集めているうち事故になるのです。昔から報道されている社会問題ですが、貧しい人は今もいなくなったわけではありません。華やかさの陰にそのような深刻な問題があることも忘れないようにしたいものです。

日々の暮らしに感謝を込めて、それぞれのローイクラトンをお楽しみ下さい。

パーソネルコンサルタントでは、タイで働きたい方のために、専門のコンサルタントが親身にご相談にのります。ぜひLINEお問合せからお気軽にご連絡ください!