2023.08.14タイの文化

フルーツ王国へようこそ

果物好きの人にとって、タイは魅力的な楽園ですね。ドリアンやマンゴーといった熱帯ならでは果物も、近年の品種改良を経てますますおいしく種類も豊富になっています。さらに外来種の果物栽培も広がりを見せていますので、日々、食べ飽きることがありません。では、タイの果物事情をちょっとだけ覗いてみましょう。

 

〈マンゴー〉

 

タイ語は「マムアン」。カオニャオマムアン(もち米マンゴー)は、タイが世界に誇るスイーツです。芳潤な甘い完熟マンゴーは、暑季真っ盛りの4月が旬。ナムドークマーイ(花の雫)という品種が人気で、輸出用にもなっています。

タイの人は青マンゴーも大好き。古くからある品種はキエウサウーイ(食の緑)やケーウ(水晶)など。マンゴー用の甘辛いペーストが瓶詰めで売られているので、ディップして食べるのがおすすめです。

マンゴーは縁起のいい樹とされ、庭に植えることも多くあります。バンコクでも、青マンゴーが鈴なりにぶら下がった風景はよく見られますよ。乾季の1〜3月頃に降る雨のことをマンゴーレインといい、この雨で青マンゴーが太っておいしくなるといわれているのですが、タイ人にとって大変身近な果物なのだとわかります。

近年は隣国のカンボジアや、台湾、オーストラリア原産の品種もタイでたくさん栽培されるようになり、一年中さまざまなマンゴーが楽しめるようになりました。まるでメロンのように大きなマンゴーもありますよ。

〈バナナ〉


タイ語は「クルワイ」。日本でよく食べるスイートバナナ(キャベンディッシュ種。タイ語はクルワイ・ホーム)もおいしいですが、タイでは豊富な品種と食べ方を楽しめるのが魅力です。
クルワイ・ナムワーという品種は生ではおいしくないですが、伝統のタイ菓子に早変わりし、そこここで見かけます。ココナッツミルクで煮たデザートに、屋台の揚げバナナ。そして、甘いもち米にバナナをくるんで蒸したカオトムマット。蒸すときにはバナナの葉で包むのでバナナ尽くしです。
「姫の爪」という名前のクルワイ・レップムーナーンは、ミニサイズで一口おやつに。クルワイ・カイはモンキーバナナなどと呼ばれますが、クラヤーサートというおこしのような菓子と一緒に食べるのが絶妙です。
バナナは花も食用になります。葉は食品を包むのに使えますし、茎の繊維から手工芸品を作ることもでき、捨てるところがない植物。バンコクでも至るところにバナナの木があり、花や房、くるくる巻いた若葉など観察できます。食用にはならない種類も非常に多くあります。

〈ドリアン〉

タイは世界有数のドリアン生産国。日本では高嶺の花の「果物の王様」ですが、タイでは雨季になると信じられないくらい安く出回ります。近年人気の品種は、匂いを抑える改良のされたモーントーン種。産地ブランドでは、ノンタブリー産が高級です。今ではタイにすっかり定着したドリアンですが、歴史は意外と浅く、18世紀頃にビルマからノンタブリー県に伝わったといわれています。かつては農園も多かったのですが、バンコクのすぐ北ですから都市化が進み、また、洪水の被害にも遭って今では栽培面積がめっきり減ってしまいました。でも、ノンタブリーに行くと街灯にドリアンのオブジェが付いていて、昔を偲ぶことができます。
現在は、東部チャンタブリー県で多く栽培されています。観光しながらドリアンの食べられる果樹園もありますよ。気をつけなければならないのは、カロリーと、お酒。ドリアンとアルコールを同時に摂取すると死ぬこともあるといわれ、タイでは実際に亡くなった人の話も聞きますので、くれぐれもご用心下さい。

〈マンゴスチン〉

果物の王様がドリアンなら、女王はマンゴスチンですね。こちらも外来の果物で、遅くとも18世紀にはタイに伝わったそうです。ヴィクトリア女王(1819〜1901)に好まれた逸話は有名ですが、ヨーロッパ諸国が植民地を求めた時代のことですので、その過程でマンゴスチンがイギリスにもたらされたようです。日本には「柿香合(かきこうごう)」と呼ばれる安土桃山〜江戸初期の茶道具があるのですが、これはタイからもたらされたスワンカローク焼という焼き物。マンゴスチンをかたどったものらしいのですが、当時の日本人は「柿」だと思ったのでしょう。
さて、マンゴスチンも雨季の6〜7月頃が旬。爽やかな香りと甘みがたまりません。赤紫色の分厚い皮も石鹸など加工品に利用されています。なお、日本の輸入マンゴスチンは100%がタイ産となっています(2022年、財務省貿易統計)。

 

その他、パイナップルや西瓜、グアバ、パパイアなどは一年中食べられます。ライチーや竜眼など中国の果物もタイ北部で多く栽培されていますし、ザボンやジャックフルーツ、ランブータン、スターフルーツ、ローズアップル、釈迦頭(バンレイシ)、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ……簡単に食べられる果物だけでも数え切れません。バンコクでは市場に行くと安く手に入りますが、地方ではさらにびっくりするような値段のことも。旅先で名産の果物が買えたら、楽しさ倍増ですね。

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