2023.11.06タイ生活

タイの子育て事情 ~社会保険加入で受けられる手当について~


今回はタイで出産・子育てをお考えの方のために少しでも役に立つ情報をお届けいたします。タイ政府は国民の出産や子育てにあたって、社会保険を通してさまざま手当を支給しています。外国人も、タイでの就労にあたって労働許可証(ワークパミット)の取得と共に社会保険の加入が義務付けられていますので、条件を満たしていれば各種手当を申請することが可能です。以下、出産や子育てに関する福利厚生や助成制度などを紹介していきたいと思います。

◆妊婦健診手当
まず、妊娠してすぐに申請できるのは、妊婦健診手当です。エコー検査、ワクチン接種、薬剤の費用が含まれ、合計1,500バーツを受け取ることができます。受け取りは計5回、妊娠周期ごとに分かれています。
1回目:1~12週で500バーツまで
2回目:12~20週で300バーツまで
3回目:21~28週で300バーツまで
4回目:29~32週で200バーツまで
5回目:33~40週で200バーツまで

◆出産一時金

申請が受理されれば、1回の出産につき1万5,000バーツを受け取ることができます。保険料を過去15カ月間に5カ月分以上を払っていることが条件です。2人目、3人目といった出産回数の制限はありません。
続いては産前産後休業(産休)手当です。日本では3カ月間の産休と子供が1歳になるまでの1年間の育休制度があるため、出産予定日の数カ月前から休業に入る方が多いと察します。一方、タイの助成制度では98日間の産休しかなく、日本のような長期支援はありません。
そのためタイのお母さんたちは、産まれてきてからの我が子と1日でも長く一緒に過ごすため、予定日ぎりぎりまで働くケースが少なくありません。予定より早く陣痛が来てしまい、会社の同僚に病院まで送ってもらったというエピソードもよく聞きます。

◆産休手当

産休手当は、社会保険事務所と勤務先の2カ所からそれぞれ受け取ることができます。計算方法は「(基本給×3)÷2」。基本給は月給に直して1万5,000バーツが上限ですので、より多く稼いでいたとしても、最多で2万2,500バーツまでしか受け取れません。
受給の条件は出産一時金と同様に、保険料を過去15カ月間に5カ月分以上を払っていることです。産休手当は2人目の出産までしか受けられません。
勤務先からも産休手当は支払われます。法律では、雇用主は産休中の女性従業員に対し、基本給と同額の手当を45日間分、支払わなければなりません。産休期間の残り45日は無給休暇となります。計算式は、「基本給×1.5」です。

◆児童手当

社会保険事務所から子ども1人当たり毎月800バーツが、満6歳まで支給されます。同時に受給できる子どもの人数は3人までです。受給の条件は過去36カ月間に12カ月分以上の保険料を払っていることです。

以上、出産と子育ての助成制度を紹介いたしました。日本と比較すると決して手厚い支援とはいえませんが少なからず、タイのお母さんたちへの助けになっています。先に述べたとおり、育児休業が短いため、お母さんたちは勤め先を退職して主婦に転じるか、仕事を続けるなら子供を預けるしかありません。

タイでも一昔前から共働きが主流となりました。お母さんたちは主婦を選ばず、産後3カ月で仕事に復帰するのがもっぱらです。子どもは両親や親戚に預ける、共に生活するなら昼間は託児所を利用する、メイドを雇うといった選択肢となります。
母乳が一番といわれるのは、タイでも日本でも変わりません。しかし、勤め先で搾乳したくても搾乳室がない、あっても日々の業務に追われて搾乳の時間が空いてしまい、そのうち母乳の出も悪くなってしまうといった困難に陥ることが少なくありません。そして結局は、母乳育児を諦めてしまうというケースも多々見られます。

タイ政府も出産・子育てを積極的に支援していますが、まだまだ需要を満たしていないというのが現実です。さらなる環境づくりや支援の改善が期待されます。

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