寺院の階段を飾る蛇の神「ナーガ」って何?
タイの寺院では、よく「ナーガの階段」が見られます。左右の手すり部分が長い蛇の胴体、一番下に蛇の頭という装飾付きの階段です。有名なのはチェンマイの寺院ドーイステープで、306段もあるナーガの階段が見どころの一つとなっています。このような寺院のナーガには、どんな信仰があるのでしょうか。
ナーガ信仰とは?
ナーガは、もともとインド神話上の蛇の神でした。神様の固有名詞というわけではなく、たくさんいる蛇神たちを総称してナーガと呼びます。地下や水界には金銀に煌めくナーガの宮殿があり、その王のことを「ナーガラージャ」といいます。ナーガは天気を制御する力を持ち、怒ると旱魃(かんばつ)などを引き起こします。人間に変身することもできます。インドの彫刻や絵画では、よくコブラの姿で表されます。
その後、ナーガは仏教にも取り入れられました。有名な仏教説話に、ムチャリンダという名前のナーガ王の物語があります。ブッダは成道後、激しい風雨に襲われたことがありました。その時、ムチャリンダが現れ、大きな胴体でブッダを七重に取り巻き、七つの頭で大きな傘を作り、ブッダを守護しました。そんなわけで、仏教の世界では、ナーガは守り神として信仰されているのです。寺院の本堂に至る階段にナーガが飾られている理由がわかりますね。
インドで生まれたことからわかるように、「ナーガ」という言葉はサンスクリット(梵語)です。タイ語では「ナーク」と発音され、ナーガ王は「ナークラート」または「パヤーナーク」といいます。タイの寺院には、誕生曜日ごとの守護仏がよく置かれていますが、土曜日の守護仏はムチャリンダがブッダを護った時の姿なのですね。
ソフトパワーとしてのナーガ
ところで昨今、タイでは「ソフト・パワー」政策が注目を集めています。その一環として、ナーガも「タイのシンボル」の一つに指定されました。全国の寺院や聖地には、階段だけでなく、巨大なナーガ像を飾っている場所もたくさんあります。たとえば、北部ペッチャブーン県の寺院ワット・タンマヤーン、東北部ウドンターニー県の寺院ワット・プータパオトーン、東北部シーサケート県のナーカーティボディー洞窟などの像は圧巻です。
また、タイの有名なイベント「バンファイ・パヤーナーク」も忘れてはなりません。これは、タイ陰暦11月満月の夜(現在の10〜11月)にメコン川からたくさんの火の玉が上がるという神秘の現象。ナーガ王のパヤーナークが火を吹いていると信じられ、そう呼ばれるようになりました。現在でも火の玉のメカニズムは解明されていません。不思議な火の玉が観測できる東北部ノーンカーイ県には、毎年外国からも多数の観光客が押し寄せます。その年に火の玉が上がるかどうかは運次第なのですが、一度、観に行ってみたいですね。
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