2024.04.01タイの文化

日タイ友好親善の魚、プラーニン

プラーニンは、タイで最も多く養殖されている身近な魚です(注)。日本の鯛にも似た上質な白身魚で、姿かたちも立派。一尾丸ごと焼いたり揚げたり、庶民の食としてタイ全国で親しまれています。このプラーニンは、日本の皇室から贈られた魚としてもよく知られ、タイの人々に大切にされているんです。

 

プラーニンとは

スズキ目カワスズメ科に属する淡水魚。英名をナイルティラピア(Nile tilapia)といい、日本でも主にその名称で呼ばれています。原産地はアフリカ大陸のナイル川流域です。一般に出回っているものは20〜30センチの大きさですが、大きなものでは全長60センチ、重さ5キロにもなります。かつては日本でも輸入して養殖し、「イズミダイ」「チカダイ」の名前で流通していましたが、のち、マダイの養殖技術が進んだために人気がなくなってしまいました

 

日本から贈られたプラーニン

タイでのプラーニン養殖の歴史は、1965年3月25日に始まりました。当時、皇太子だった明仁親王(上皇陛下)がラーマ9世プーミポンアドゥンヤデート国王(在位1946〜2016)に50尾のプラーニンを贈られたのです。目的は、タイの人々に不足していたタンパク源を補う魚として開発することでした。最初の50尾は、チットラダー離宮の庭にある王室プロジェクトの試験場で飼育されました。その結果、成長が早く、十分な繁殖力があると確認され、翌1966年3月17日にはタイ水産局に1万尾が下賜されました。水産局で繁殖させたプラーニンは、その後の3年間で500万尾以上が国民に配られました。

 

日本から贈られたときには、まだタイ語の名前がなかったのですが、後に「プラーニン」と名付けられます。「プラー」は「魚」の意味。「ニン」の方は、日本では「明仁の仁の字を音読みした」という話がまことしやかに語られているのですが、タイ水産局によると語源はナイル川の「Nil」と、ナイルティラピアの学名Tilapia niloticaの「nil」なのだそう。「nil」をタイ語読みすると「ニン」になるのです。

 

なお、プラーニンの研究は現在でも続けられています。試験場の魚たちはプラーニン・チットラダーと呼ばれ、品種改良により、プラーニン・チットラダー2号、3号、4号という種類も生まれています。

 

プラーニンのおすすめ料理

まずはなんといっても尾頭付きの塩焼きです。塩をたっぷりまぶして炭火で焼いたパリパリの皮、焦げ目の香ばしさはたまりませんね。はらわたを抜いた後にハーブをぎっしり詰めて焼くため、川魚特有の臭いもありません。白菜やレタス、パクチーなど生野菜が添えられており、ちょうどいい口直しに。他には、はらわたを抜いて表面に切れ目を入れ、丸ごとからっと揚げてもおいしくいただけます。シーフードのタレ(唐辛子味)で食べてもいいですし、ガーリック味、生姜を使った醤油味のソースをからめたものなど、さまざまな調理ができます。ライム蒸しにもよく合いますね。

 

プラーニンの子育てはすごい!

ところで、興味深いのは、プラーニンのメスの子育て。産卵・受精が済むと、卵を全て口に含み、外敵から守るのです。卵は4〜5日で孵化しますが、すぐには口から出しません。稚魚のお腹には栄養の袋が付いていますから、数日は何も食べず、お母さんの口の中で育っていきます。その後、口から出てきた稚魚たちは藻などを食べるようになりますが、お腹がいっぱいになったらお母さんの口の中に逆戻り。ひとり立ちできるようになるまでメスが大事に子供を守るんです。すごい魚なのですね。

 

(注)タイ水産局の2022年報告書によると、養殖淡水魚の総生産量466,953トン中、プラーニンは269,394トン(約57.69%)となっている。

 

 

 

 

 

 

 

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