2024.10.31タイ生活

「『言って』と言った」だけでは言ってくれない~茶話のススメ

6月、雨季ですね。皆さんご機嫌いかがですか。
かつては、この時期に日本の梅雨を重ねて少し残念に思っていましたが、当地で暮らすうちに、雨で暑さも抑えられ、空気もきれいになり、何よりトロピカルフルーツが百“果”繚乱とばかりに続々旬を迎えることを知り、楽しみな月となりました。特に私は、真紅の皮を纏った新鮮なライチをドリンク一杯ほどの値段でも手に入れ、溢れる果汁で口福を満たすと、タイに住んでいる喜びを感じます。

と、私が嬉々としていても、今これを読んでくださっている方の中には、落ち込んでいたり、タイでの毎日に飽き飽きしたり、何かに嫌気がさしたりしている、という方もいらっしゃるかもしれませんね。私は、一対一でお話しできる時には、よく「今、仕事/育児/タイ生活は楽しいですか」とお尋ねします。「楽しい!」というお話を伺うのはこちらも楽しくなりますが、「楽しくない」「辛い」というお話も、そう率直に仰ってくださることをありがたく感じます。
私自身、その話に対して気の利いた言葉をかけられるとも限らないのですが、今期のNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』で主人公が私の想いを代弁してくれていました。「みんな辛いなら、私は、むしろ弱音は吐くべきだと思う」と。同級生に「弱音なんか吐いたところで何も解決しないだろ」と返されても、「うん、しない。でも、受け入れることはできるでしょ。私、弱音を吐く自分を、その人を、そのまま受け入れることができる……居場所になりたいの」と。私がこう思うのは、私自身が、また、これまで関わったクライアント・同僚・上司の例でも、吐き出すことにプラスの効果を感じているからです。

ところで、本コラムの標題にも使っている「茶話」という言葉は、通常「気軽な話」を指しますが、この「気軽な話」の積み重ねが人事や人間関係においても重要な話の礎や前進の動力として大事です。
とりわけ、礼儀やシニオリティが重視されがちな日本人やタイ人には、「何かあったら言って」と言っておいても、実際には、なかなか言ってくれないのは、皆さんも思い当たる話ではないでしょうか。
言ってもらう/吐き出してもらう環境・関係づくりとして、茶話からでも、「私の話をちゃんと聞いてくれる」とか「理不尽に怒られない」と安心してもらったり、「聞いたことにしっかり反応してくれる」という手応えを感じてもらったりすることが肝要です。

一見目の前の仕事とは関係なさそうな話からでも、相互理解や確認に繋がることもあり、決して無駄話だけにはならない時間の持ちようもあるものです。さあ、皆さんも、今頭に浮かんだ方と、お茶でも片手に、お話しをしてみてはいかがでしょうか。
とはいえ、ただ話せばいいというわけでもなく、結果、「ダメだこりゃ」「言っても無駄」と思われてしまうと、“青天の霹靂”退職や従業員の:“地縛霊”化に見舞われかねないので、平素からの態度や姿勢も大事になってくるのですが……。次回は、その辺のお話でもしましょうかね。

【著者:水原和美】
同志社大学法学修士(労働法)、ソウル大学博士課程単位取得退学(国際関係学)、外務省専門調査員(韓国内政)、欧州系総合人材サービス会社タイ法人、労働経済系シンクタンクKL駐在員事務所などを経てタイで人の仕事と気持ちに寄り添うコンサルティング会社「ナナプロ」を設立。

<本記事は「パノーラ」タイ版 2024年6月号 コラム『南洋茶話』(2)を許可を得て引用・転載しております。>

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