タイと交通事故と私たち~「マイペンライ」と微笑めますか?~
突然ですが、皆さんは一瞬先の死を覚悟したことはありますか。私は、直近4年に2回あります。1回目は、青信号で横断歩道を渡っていたらバイクにはねられて宙を舞い、2回目は乗っていたバイクタクシーが転倒して身を投げ出されたところに正面から車が走ってきて。いずれも結果的には大ごとにならなかったので、今こうしてコラムを書いてはいますが、2回ともタイの日常でのことです。
絶体絶命の状況で頭に浮かんだのは、「無理!」「夫、ごめん!」程度のもので、何かを悔いたり大切な人への感謝や愛を思い起こしたりする余裕は皆無。ぱちんと叩かれて死ぬ蚊のように、私たち人間もいつあっけなく命を終えるか分からないものなのですね。振り返れば、私の例に限らず、タイ駐在中に社用車での交通事故で奥様と幼いお子さんを残して急逝した知人もいますし、毎年のように邦人が巻き込まれた交通事故のニュースも見聞きします。WHO(世界保健機構)によると、タイはASEANで1位、世界で9位の“交通事故死多発国”。タイに住む私たちは、生活面でも仕事面でも、タイでの交通事故を我がこととして真剣に考えてみる必要があるように思います。
タイでの自分や身近な例から、私は、程度や状況の如何・責任の有無を問わず、事故に遭ったら損しかない、と学びました。とにかく、日本的思考や主張は通じず、事故に遭ったら失うばかり。事故に遭わないのが一番! 信号も一方通行も信じないこと。微笑みの国タイでも、ハンドル握ると微笑み激減、こちらもマイペンライでは片づけられないとくれば、結局我が身を守るのは自分の意識。一方、事故を起こしても、やはり厄介。外国人・外国企業にはなおさら。
企業としては、まず、雇用形態の直接・間接を問わず、ドライバーの教育・労務管理は、日本以上に注意が必要です。私をはね飛ばしたバイクも、某配送会社の新人さんでしたが、脇見運転の理由を「仕事に慣れていなくて」としていました。ドライバーの薬物使用の話は、会社契約のドライバーでも時々聞く話で、興奮状態による職場での暴行事件や危険運転等が大手日系企業現地法人でも起きています。
次に、ドライバーを利用する関係者の意識にも要注意です。昔ほどではなくなったとはいえ、いまだに連日のように会食・週末ゴルフが常態となっている例もあるようですね。それをする本人も大変ですが、その活動時間++の始業終業時間となっているドライバーも大変です。「OTつくと喜ぶから」「日中寝てるから」と健康安全管理が疎かになっていませんか? 待機させるときは、食事や休憩をしっかりとれるよう目安時間を伝えていますか? また、変に“タイ化”している例だと、「問題が起きてもお金で解決できるから」と、ドライバーを急かして結果的に交通ルールを破らせたり、事もあろうか労いをはき違えて社内パーティーで「少しなら酔わないでしょ」とドライバーに飲酒を勧めたり。業務上運転するスタッフだけでなく、車通勤の従業員が飲酒を伴う会社行事の際どうしているかも、何かが起きたら本人の責任だけでは済まないかもしれませんので、くれぐれもお気を付けくださいね。
<本記事は「パノーラ」タイ版 2024年10月号 コラム『南洋茶話』(6)を許可を得て引用・転載しております。>
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