昔ながらの素朴な行い ロウソクを手にお寺を回る「ウィヤンティヤン」
今年も観光誘致に積極的なタイ。国内で催される祭りや仏教行事がどんどん大掛かりになってきています。その中で、周辺の飾り付けが派手になっても本来の行いはいたって素朴な「ウィヤンティヤン」を見ていきましょう。
ウィヤンティヤンは、ウィヤン=回る、ティヤン=ロウソクと、文字どおりロウソクを手にして寺院の本堂や礼拝堂の周囲を歩く行いです。時計回りに三度、「三宝に帰依」します。三宝は日本の仏教の教えと同様、「仏」「法」「僧」です。
年3回の大事な行いですが、行う日も大事です。暦順でまず旧暦3月満月の日、新暦2月3月辺りの「万仏節(マーカブーチャー)」。次に、旧暦6月満月の日、新暦5月6月辺りの「仏誕節(ウィサーカブーチャー)」。そして旧暦8月満月の日、新暦で7月8月の「三宝節(アーサーンハブーチャー)」の3日です。いずれも祝日で、2025年の今年はそろそろ万仏節の日(2月12日)がやってきます。
ちなみに、ウィヤンティヤンが行われる日は必ず、お酒の販売が禁止されます。正確には、万仏節、仏誕節、三宝節、そして三宝節の翌日で暦上の雨期入りとなる「入安居(カオパンサー)」と、雨期明けの「オークパンサー(出安居)」の仏教重要日5日です。
ウィヤンティヤンは、タイ国内ほとんど全てのお寺で行われます。バンコク都内では特に、「ワット・ベンチャマボピット(大理石寺院)」が人気です。巨大な遊行仏が建立された、バンコク西隣ナコーンパトム県の「プッタモントン」もウィヤンティヤンで人気です。
日が落ちて暗くなったころには在家者が集まってきて、思い思いに堂の周囲を歩き始めます。境内には屋台や露店が立ち並んで賑やか、ケバケバしい七色電飾にシラけることもありますが、ロウソク、線香、ハスの花を手にする在家者の姿はいたって素朴です。派手になったといえばせいぜい、ロウソクの火が消えないための透明なグラスの容器が増えてきたことくらいです。
日没後の行事と思われがちですが、昼間から行われています。バンコク随一の観光名所「ワット・プラケオ(エメラルド寺院)」で、観光客が入ってこない奥まった堂でウィヤンティヤンが行われているのを見たことがあります。
ウィヤンティヤンは本来、特別日の行事ではありません。何もない普段の日に、在家者が1人で堂を回る姿を普通に見かけます。タイの人が、仏教を拠り所にしている気持ちを表わすのが、ウィヤンティヤンなのです。