ルークトゥンがタイの国民的音楽と言える理由
「ルークトゥン」という言葉を聞いたことはありますか? もしかすると、「タイの演歌」というイメージを持っているかもしれません。確かに、ルークトゥンには演歌調の曲も多くあります。しかし、それはルークトゥンの一面に過ぎません。
ルークトゥンは、ポップス、ロック、民族音楽、フォーク、昭和歌謡、ニューミュージック、さらにはEDMやラップ、ヒップホップといった最新の音楽ジャンルの要素も取り入れた、多様な音楽スタイルを持つジャンルです。まさに「タイの歌謡曲」とも言える、幅広いジャンルを内包した音楽なのです。
音楽を文章で説明するのは難しいものですが、「百聞は一見にしかず」という言葉があるように、ルークトゥンの魅力を知るには実際に聞いてみるのが一番です。YouTubeなどの動画サイトで「ルークトゥン」と検索すれば、多くの楽曲やライブ映像を楽しむことができます。ぜひ一度、その音楽に触れてみてください。
では、なぜルークトゥンはタイの国民的音楽と言えるのでしょうか?
ルークトゥンはタイ社会の象徴
20年ほど前、海外在住のタイ人を対象に行われたアンケートで、「タイを思い起こさせるものは何か?」という質問に対し、80%以上の人が「ルークトゥン」と答えました。この結果からも分かるように、ルークトゥンはタイ人にとって、祖国を象徴する音楽なのです。
また、タイは学歴や家柄による社会的格差が大きい国ですが、ルークトゥンの世界ではそれらに関係なく、歌の実力だけで成功を掴むことができます。そのため、ルークトゥンは多くのサクセスストーリーを生み出してきました。
例えば、貧しい家庭に生まれた若者が、歌唱コンテストやオーディションを通じて成功し、スターになるケースが少なくありません。ルークトゥンの歌手たちは、多くの子どもたちにとって「自分もできるかもしれない」「この道で親孝行したい」「貧しい暮らしから抜け出したい」といった夢や希望の象徴でもあります。
ルークトゥンの人気は数字でも証明される
ルークトゥンの人気は、データからも明らかです。
2021年のYouTubeでの最高再生数の楽曲を比較すると、以下のような結果が出ています。
◆ルークトゥン:9,353万回再生(曲名:ハームトワ / 歌手名:ミントラー・イントラー ft. Og-Anic)
◆ポップス:738万回再生(曲名:マイチャイマイルースック / 歌手名:トム・イサラ)
この再生数の差は圧倒的であり、ルークトゥンがいかに多くの人々に親しまれているかが分かります。
2021年時点でのタイの総人口は6,617万人、バンコクの人口は523万人でした。つまり、ルークトゥンの人気曲は、タイ全土に広がる膨大なリスナー層に支えられていることが分かります。
タイの人々の心を歌い続けるルークトゥン
ルークトゥンは、単なる音楽のジャンルにとどまらず、タイの社会や文化、そして人々の心に深く根付いた音楽です。その歌詞は、田舎から都市へ出稼ぎに来た若者の苦悩や家族への想い、恋愛や社会問題など、庶民のリアルな生活を描いています。そのため、多くの人々が共感し、心を寄せるのです。
ルークトゥンは、今もなお進化を続けながら、タイの人々の心を歌い続けています。ぜひ一度、ルークトゥンの世界に触れて、その魅力を感じてみてください。