タイ人スタッフに指導したり研修をしたりした際、上司が見ているときはちゃんとできるのに、いつの間にかその通りにやらなくなっているというケース、本当によくありますよね。でも、それはタイ人が怠惰なのではなく、“私たちにとっての”基本的な知識や当たり前のことをまず教える必要があるのかもしれません。H&G(Thailand)Co.,Ltd.代表の齋藤さんにお話を伺いました。
齋藤哲プロフィール
H&G (Thailand) Co., Ltd.の取締役社長。管理職やタイ人スタッフのための研修、人材育成の仕組みづくり、Eラーニングなど、教育に関わるさまざまなサービスを提供している。
https://g-aca-th.com/
※本記事はYouTubeチャンネル【知って繋がるバンコクのビジネスチャンネル〈タイ前線〉】の投稿を基にしております。
当たり前に思うことこそ、その背景から説明する
まず前提として、ここでいう「基礎的な知識」とは、我々日本人にとっては当たり前のこと、わざわざ教えるまでもないようなこと、我々が勝手に思っているようなことを指します。そうした当たり前のことを「言わなくても分かるだろう」と軽視せず、きちんとその背景と理由から丁寧に説明することが必要です。
飲食店で「両手でものを扱う」を定着させるには
飲食店での例を挙げましょう。H&G社には飲食店のクライアントが多く、改善策の中でよく「お金やお皿といった業務上で触るものはできる限りきちんと両手で扱いましょう」というマニュアルを作ることがあるそうです。その理由としては丁寧に見えるし、安全に運べるから。それは、これを読んでいる日本人の誰しもがすぐに理解ができると思います。
さて、この「両手でものを扱う」ということを教える場合、教えること自体は非常に簡単で、ただ「ものは両手で扱うようにしてください」と言えばいいだけ。でも、実際のタイでの現場ではその指導が長続きしないことも多いですよね。その理由の一つとして、齋藤さんは「受けてきた教育や文化の違い」があると指摘します。生まれた国や背景が違えば当然、そこで当たり前だったものが当たり前ではなくなります。ですから、「両手でものを扱う」というルールを決めたならば「どうしてこのルールを作ったのか」「どうしてこのようなことをしないといけないのか」という本当に初歩のところから説明するようにします。
「自分たちのお給料はお客様からいただく売り上げからできている。だからお客様には満足して喜んでいただいて、再来店してもらわないといけない。そうするとまた売り上げが上がって、自分たちの給料に跳ね返ってくる。だからお客様には喜んでいただかないといけない。お客様に良い印象を与えるというのはすごく大事なんだよ」
このように背景から丁寧に伝えることで「両手でものを扱う」というルールの本質が理解でき、「面倒だし片手でいいや」に戻ってしまうのを抑制できるようになってくるのです。
挨拶や報連相も「やれ」だけでは定着しない
日系企業であれば特に、挨拶、報連相、タイムマネジメントを徹底させたいと思うことが多いはず。でも、これもまさに上記の例と同じで「どうしてそれが重要なのか」「どうしてそれをしないといけないのか」を丁寧に説明してタイ人スタッフに理解してもらう必要があります。
タイの文化的背景として、なんとタイには高校生や大学生の時代にアルバイトをするという文化がありません。つまり大学を卒業した後、会社や現場の空気感が全く分からないまま新卒で入社してくることもざらにあるということです。ですから新卒を採用する場合には、そういった社会人として当たり前のことをしっかりと教えていくのは会社の責任だととらえ、力を入れていただきたい部分です。
また、新卒だけでなく中途採用の方でも、基礎知識があった方がトレーニング研修などを実施した時に定着がしやすいため、土台をきちんと整えることは非常に大事であると言えます。
社員の基礎教育には動画を活用しよう
とはいえ、基礎知識は教える方も大変。短期的な成果には繋がらないため結果が見えづらく、教える範囲も広く、何度も何度も繰り返し同じことを継続して伝え続けなければなりません。
そこで有効なのがEラーニング。手軽に導入するなら社内でスマホで動画を撮ってトレーニングに活用するのがおすすめです。経営理念やビジョン、オペレーションに関する動画をどんどん撮って、それを繰り返し何回も見てもらうという形でトレーニングすれば社員は着実に基礎知識を固めていけますし、教える側の負担も大幅に軽減されます。
また、H&G社では「H&Gラーニング」というサービスをタイで提供しており、まさに「タイ人に身につけておいてほしい基礎知識」というところに焦点を当てたタイ語の動画を約200本収録しています。1本5〜10分程度なので、タイ人スタッフが毎日見れるように研修に組み込んでいる日系企業も多いのだとか。プロの視点で制作されたこういったサービスを活用するのもいいですね。
まとめ
いい組織づくりはいい土台から! 基礎的な知識をつけさせ「日本人が当たり前に思っていること」のすり合わせをきちんとした上でノウハウを教えることで、効率的でより良い人材育成を目指すことができます。
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その他、パーソネルコンサルタントでは、タイ・バンコクで駐在員の赴任前研修、赴任後研修、ビジネスマナーや報連相、
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