タイ人スタッフとのミーティングの中であまり意見が飛び交っていないように思う時があります。そして、彼らには意見がないのかと思ってしまうこともあります。その原因にはタイ人が持つ「グレンチャイ」の考え方が関係していることが多々あります。
ではこのグレンチャイとは何か?どう向き合っていけばよいのか?
タイで仕事をされて10年、そのうち9年は代表をされていた山下さんにお話を伺いました。
<山下勝弘氏プロフィール>
兵庫県出身。大学卒業後、旅行会社での勤務を経て2002年に人材サービスのベンチャー企業に入社。12年にタイに渡り、タイ法人に勤務ののち、同社にて100人規模のタイ法人社長を9年間経験。その後、現在はフリーランスとして活動中。
※本記事はYouTubeチャンネル【知って繋がるバンコクのビジネスチャンネル〈タイ前線〉】の投稿を基にしております。
グレンチャイとは?
グレンチャイは日本語に直訳されるとよく「遠慮」と訳されますが、どちらかというと「忖度」に近いものです。他者への配慮や気配りでタイ独特の文化です。一言で説明すると、「目の前の方の気分を害さないためには自分の考えと少し違うこともしていい」という考え方だそうです。
グレンチャイで困ったこと
上司、経営者としてタイ人スタッフと共に働く中でグレンチャイに困ることは、「情報を得難くなること」と「的確な指示が難しくなること」の二つです。
一つ目の「情報を得難くなること」について、日本のミーティングでは、社内システムの改善を目指しブレインストーミングを行った際、忖度や遠慮はあれど、良い結論を導き出さなければいけないという責任感から多くの意見が出されます。一方で、タイでは会議中に人の気分を害さないことが重要なポイントとなります。グレンチャイ(遠慮や配慮)が重視され、特に上司の気分を害さないように上司の意見に合わせたり、意見を発信せず上司の意見を待ったりしてしまうことがあります。これによって似通った意見しか出てこず、タイ人は自分の意見がないのかと多くの日本人は感じてしまいます。
二つ目の「的確な指示が難しくなること」について、タイ人は上司に仕事を説明されて頼まれたとして、何をすればいいか100%理解していなかったとしても聞き返さずに了承してしまうことがあるのです。それは何回も聞き返すことで相手に「自分の説明はわかりにくかったのか」と思わせてはいけないというグレンチャイの精神から引き起こされます。
グレンチャイとの向き合い方
グレンチャイという文化は人間関係向上のために役立つ一方で、ビジネスにはあまり適用すべきではありません。職場ではノーグレンチャイ(グレンチャイは必要ない)と伝えることが大事です。文化なので直ちにグレンチャイをやめさせることはできませんが、着実にタイ人スタッフので目上の人に意見するハードルを下げることができるはずです。
また、上司や経営者自身が、今グレンチャイが起こっているかどうかに敏感であることが重要です。気が付いてさえいれば聞き方や受け止め方を変えることで対処できます。そういう意味ではグレンチャを理解しておくだけでも、意見を聞くときの意識は大きく変わるはずです。
更に、正確に部下の意見・本音を引き出すためには、個別でのアプローチすることが重要です。一対一であれば会議の場で言えない本音も教えてくれます。従業員それぞれの意見や声を積極的に聞くことはグレンチャイだけでなく従業員エンゲージメントの観点から見ても効果的なので心がけるとよいでしょう。
まとめ
文化の尊重とビジネスにおける効率重視、どちらも否定すべきではないもので、どちらを優先させるかには悩まされますが、ビジネスはビジネスであると切り離して考えることも必要ですね。
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