日本人学校の生徒数の多さや、フジスーパー界隈でのお子さん連れの多さからすると、タイでお仕事をしながらも、お父さん、あるいは、お母さんとしての役割を担っている方もかなりの数に上るかと思います。
育児をしていると、仕事上の人材育成や部下・後輩と接する場面と重なることがありませんか?特に、最近の育児書を見ていると、モチベーションを念頭に置いて書かれているものや、大人向けのコーチングまたはアンガーマネージメントのセミナーでも伝えられているような内容も多いように感じます。
そこで、今回は、育児にも仕事にも役立てられそうなヒントを今年出版された本からご紹介したいと思います。
『ずるい子育て』(親野智可等)ダイヤモンド社
この本は、「はじめに」がこんなメッセージで始まります。
「ずるい子育て」が目指すのは、
親がラクになって幸せになることで
子どもを幸せにすること
例えば、この「子育て」を「駐在」に、「親」を「駐在員」に、「子ども」を「現地従業員」に読み替えても十分意味が通じて共感する、という内容が何か所も出てきます。今回のコラムのタイトルでは、シラブルや文字数が少ない方が目に入りやすいと思い「駐在」にしましたが、それは対象を限定する意味ではなく、現地採用も含めて「管理職」や「人材育成」、と言い換えてもいいでしょう。
そして詳細に入る前に示される「ずるい子育て5か条」。皆さん、各々、ご自身の仕事をイメージしながら、ところどころ単語は先のように入れ替えて読んでみてください。
1.しつけより能力アップ
2.親の常識より子どもの適性
3.親も自分の人生を楽しむことを忘れない
4.勉強より熱中体験で勝手に伸びていく
5.子どもは他人
日本から来ていると、どうしても日本の常識や日本での「普通ならこうであるだろう」というもの、あるいは本社のルールというものを現地でも日本で日本人相手にするようにやってもらわないと、浸透させないと、と思ってしまう部分もあると思います。しかし、この5か条の補足で著者が「子育てにおいても作戦が必要……すべてをきちんとやろうとせず、諦めるべきことは諦めること」としているように、日本式を貫くべきこととそうしなくてもいいことを見極めて、現地従業員の能力や適性、そして何に熱中するのかに目を向けることが肝要です。
3.についても、自身の職責の全うや成果の達成に懸命で、生活=仕事一色となってタイでの仕事以外の時間やご家族との時間がとれていないという方も結構お見かけするので、自分自身の人生も限られたものとして大事にすることは是非意識して頂きたいと思います。
でも、「ずるい」という表現が引っ掛かる、という方もいらっしゃるかもしれません。この点、著者自ら、「『ずるい子育て』とは、親自身が幸せであることで子供を幸せにしようとすることです。本当は決してずるくはないのです」とあり、自己犠牲や忍耐を美化する風潮のある日本人の精神性に対して、より良い成果を得るために、少し肩の力を抜いて、目的と手段に対する目線や向きを少し変えてみようという提案と読めます。
この本は、「伸びしろを最大化する小学生の育て方100」という副題がついているように、元教師である著者の豊富な経験から伝える小学生の育て方に対するアドバイスであるため、さすがに大人には当てはまらなかったり、関係のない項目も多かったりするのですが、以下のような内容は、職場での人材育成でもそのまま通じることではないでしょうか?
※以下の(括弧)内は、著者解説からの要約
14.聞く耳を持たない子に指示が入り始める、いい質問
(一方的な指示に慣れると、聞く者がまともに聞いていない場合があるため、一方的に指示内容を伝えるより、聞く者自身に決めさせたり、選ばせたりすることで責任感が生まれ、実行への意識が働く。)
17.しつけの早道は、愛されている自信から来る素直な気持ち
(しつけをしたかったら、𠮟る前に関係をよくするのが早道。「自分はこの人に大切にされている」と思えれば、素直な気持ちで受け入れてくれる。)
18.朝ご機嫌に家を出るだけで、トラブル予防になる
(朝から不機嫌だと、気持ちがふさいでうつむき加減になり、周囲に気を配る余裕をなくしてしまう。もやもやを抱えていると物事にも集中できない。朝の機嫌をよくすることは安全や能力向上につながり、コスパが高い行為。)
20.自分が憂鬱でも子供は気持ちよく送り出す
(今日の会議や昨日の疲れなどで自分が朗らかにすることが難しい場合、「朝、起きたらとりあえず笑う」こと。脳科学的に、嘘でもいいから笑顔でいると、セロトニンが出て実際に安らかで幸せな気持ちになるため。)
96.子供を助ける深呼吸
(育てることにストレスはつきもので、育てる側も疲れて怒鳴りたくなるときもあるでしょう。でも、暴言や暴力は受ける側の脳の萎縮を招き、自己肯定感の低下や、育てる側への不信感増大にもつながるもの。キレるのを防ぐには、「深呼吸」が最も効果的。また、可能なら一時的にその場を離れるのも効果的。)
小学生のお子さんを持つ親御さんであれば、上記の他にも、実際の子育てに役立つテクニックやヒント満載の一冊ですので、丸々読まれてもいいかもしれません。
該当する年齢やそもそもお子さんがいらっしゃらない場合、この本を実際に手に取る気にはなりにくいと思いますが、本書に限らずとも、今の子育てに目を向けてみると、自身が子供の頃に受けた教育と今の教育の間に違いがあることに気づき、世代間や異文化間の感覚の違いにも柔軟な姿勢を持ちやすくなるような気がしますので、もしテレビや動画等ででもたまたま見かけることがあれば少し関心を持ってご覧になってみてはいかがでしょうか。
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