<タイから見る大阪地検元トップの性的暴行事件は他人事?人事視点でのニュースの見方(1/3)>の続きです。
今回は標題に引用した事件のようなことが自分の身近で起こるのを防ぐために、特にタイでよく認識しておくべきリスク要因として「お酒」と「性に対する認知」について見ていきたいと思います。
●お酒
本件ほど世間を騒がす事件とまでいかなくても、やはりトラブルにはお酒が絡むことが多いものです。身近なところでも、セクハラ・暴行事件・公務執行妨害等、行為の内容は様々ですが、しらふであれば極めてまじめで仕事にも熱心で周囲からも慕われていた人が問題を起こし、降格、左遷、解雇等となったことは案外少なくなかったりします。
日本でも起こりえますが、タイという場所で考えた場合、日系企業駐在員の多くは運転手付きのカンパニーカーを使える状況かと思います。それによって日本では車通勤だったからそもそも飲酒の機会がほぼなかった、飲んでも終電を意識して適当に切り上げていたという方もとことん飲めるようになったり、現法のそこそこの立場や数少ない日本人となることで、職種不問で日本からの出張者やお客様の接待の機会が増えたり、ということもよくあるかと思います。
また、単身赴任者も一定数いることから、「他にすることがない」といった理由でも飲んだり誘ったりということもあるようです。異文化環境での仕事で抱えたストレスを発散したり、お酒を飲むことで親交を深めたり腹を割って話したり、とお酒に良い効果もありますが、やはり度を超えた場合のリスクはかなり甚大になります。お酒を楽しみながらもトラブルを回避するために、少なくとも、周囲から見て弱い人や酔ってしまったと思う人にお酒を勧めない、適宜水などを飲ませる、そもそも飲まないといけないという雰囲気を作らない、早く安全に家に帰らせるということは、自分に対しても、同席する全ての人に対しても必要な配慮です。
殊に、在タイ邦人コミュニティーの年長の方では、悪意なく善意のつもりで、「もっと飲んで」「遠慮しないで」と昭和的なマナーでお酒を勧める方がまだ結構いらっしゃるように見受けます。令和的には、リスク管理の上で適切に飲む、飲まないも受け入れて一緒に楽しむ、ということがマナーではないでしょうか?
●性に対する認知
バンコクを代表するオフィス街のシーロム・アソーク、そこから徒歩でも行けるほどに隣接しているタニヤにソイカウボーイをはじめ「女性のいるお店」へのアクセスが非常にいいバンコク。日タイの経済格差もあり、元々お好きな方は一層頻繁に、元々ご縁がなかった方でも仕事や交友関係で訪れる機会を持ちやすい環境。タイの方のニッコリ笑顔にサービス精神、しかもお金がより充実したサービスをもたらしてくれることに、幸せな勘違いに止まらず、危険な認知の歪みをもたらしている方も一定数いらっしゃるようです。
現法経営でローカルスタッフの給与水準を把握するようになると、それは自身の何分の一と大きな格差があることが分かりますし、駐在員の住居も大多数のタイ人従業員にとってはその家賃からして月給の何か月分かかかり一生暮らすことができないような豪邸です。自身にとっての夜のお店の女性と言えばタイ人となることで、お昼のお仕事をされているタイ人女性に対しても、その所得水準等から軽く見て、自身のタイでのステイタスでどうにかできると思ってしまっているケースがあることが、残念ながら見受けられます。同様のことは、現地採用の日本人女性相手でも一部で起こっているようです。
「日本だともうNGだけど」なんて枕詞を使ってタイではOKと勝手解釈の言説も皆さんどこかで聞いているのではないでしょうか? 皆さんに問題がなくても、周囲にリスキーな方がいることでいつか火の粉を浴びることになるかもしれません。日本でダメなことはタイでもダメと心得る方が賢明です。海外駐在員としてなら、仮に日本ではお金で済んだり罪に問われる法がなかったりしても海外では大問題になりうること(例えば双方同意であっても、既婚者であれば海外にはまだ姦通罪が適用される国)もありますし、訴訟云々に止まらず、タイもそうですが銃器も流通していて怨恨からの事件も頻繁に起きている国もありますので、あくまで仕事でその国に滞在している以上、トラブル回避の線引きは必要です。
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